大使 - スピーチ・寄稿

2015年新年のごあいさつ

明けましておめでとうございます。皆様におかれましては、お健やかに新年を迎えられたことと心からお慶び申し上げます。

先日、ウィーン大学で「変化する日本の政治と官僚との関係」と題して話をする機会がありました。質疑の中で、日本の将来について悲観的な見方があるがどう思うかという質問がありました。私は即座に「心配ありません。私はまったく楽観的です。確かにいろいろ問題はありますが、日本人の底力を信じています」とお答えしました。

一般的に、悲観的な人は思慮深く、楽観的な人は能天気と見られがちです。「英国人は、いかに状況が悪いか、さらに最悪であるかを聞くことが好きな唯一の国民である」(チャーチル) 悪い話を聞くことが好きということは、それを聞いて将来に備えようということで、それで悲観する必要はないということです。

昨年は、お正月早々、ここの中国大使が日本を批判する署名記事を投稿し、それに対する反論をすぐ同じ新聞に掲載したことが仕事初めとなりました。それからはウクライナ問題一色の1年となりました。幸い日中関係については、11月に関係改善への一歩が踏み出されましたが、ウクライナでは依然として緊張状態が続いています。「力による現状変更は認めない」、この原理原則はウクライナだけではなく、アジア、そして世界共通のものでなければなりません。OSCE(欧州安全保障機構)では毎週木曜日、ホーフブルクの大会議場に大使が大勢集まり熱い議論を闘わせています。激しい言葉のやりとりは日常茶飯事です。非難を一身に浴びるロシア代表も必ず出席し、あの手、この手のレトリックを駆使して自国の弁護に相務めています。国際金融の世界でヨーロッパの国々が手強いのは、毎日のように会ってはプロレスの技を磨き合っているようなものだからだ、という話を聞いたことがあります。OSCE もまさに言葉のバトルそのものであり、我が国の外交の来し方、行く末に思いを巡らせながら、我々として、今、何ができるかが問われています。

今年は、第2次世界大戦が終って70年目を迎えます。日本はこの70年間、平和国家としての道を歩んで来ました。世界各地で起きている紛争を見ますと、我が国がより積極的に国際社会の平和と繁栄に貢献していくことは、日本人が海外で大事にされ、また安全に暮らしていくためにも大切なことではないでしょうか。

このような節目の年にあたり、本年が皆様にとりまして実り多き1年となること、あわせて皆様のご多幸、ご健勝を心からお祈りして、年頭のご挨拶とさせていただきます。

2015年1月
特命全権大使
竹  歳     誠